
農作物被害や人身被害が相次ぎ、民家や商業施設に侵入したり、市街地にまで出没するなど、秋田県内で深刻な状況となっている〈クマ問題〉。
春になり、冬眠から目覚めたクマの行動が活発になる時期を迎え、県内でも再び目撃情報が増えてきました。山菜採りやレジャー、農作業などで屋外に出る機会が増えるこれからの季節は、クマと遭遇しないための備えがより大切になります。怖がるだけではなく、正しい知識を持ち、必要な対策を取ることが大切です。
今回は、専門家による最新情報をご紹介。安心・安全な日常を送るために、春の外出や暮らしの中で、今日からできる備えを始めましょう。

教えてくれたのは「北秋田市 くまくま園」
山に生かされクマと共存してきたマタギ文化を育む森吉山の、豊かな自然の中にあるクマの動物園。のびのびと寝転んだり、じゃれ合ったりする自然体のクマの姿が眺められる。
Q1.「北秋田市 くまくま園」の主な目的や行っている活動について教えてください。
A.当園はクマとヒトの共存を学び、未来につなぐ「命の森、学ぶ森」であり続けることを目標にしている施設です。クマたちがストレスの少ないより豊かな環境で過ごせるよう、施設設備や環境エンリッチメントを改善維持し、アニマルウェルフェア※の向上を図っています。さらに、クマと私たちがどう共存していくべきかを学べる環境学習プログラムを充実させ、地元の小中学生や観光客に向けてマタギ文化とクマの関わりを伝えることで、地域固有の知恵を未来へ継承。また、「打当温泉 マタギの湯」や「道の駅あに」などと連携し、奥阿仁地域全体の観光の核となって、地域経済の活性化を図っています。
※アニマルウェルフェアとは…動物が心身ともに健康で、ストレスの少ない環境で生きることを尊重する考え方。「飢え渇きからの自由」、「不快からの自由」、「痛み・傷害・病気からの自由」、「恐怖や抑圧からの自由」、「正常な行動を表現する自由」という5つの自由を基準としている。

Q2.ツキノワグマの見た目や性格の特徴は?
A.ツキノワグマは、黒色の体毛と丸く比較的大きな耳を持つ中型のクマで、胸に三日月形の白い模様があり、「月の輪(ツキノワ)」の名前の由来となっています。個体によって形や大きさは違い、親子を除き基本的には単独で行動することが多いです。上半身が発達し、前肢の方が後肢よりも長くて力強く、木登りが得意。同じクマでも、性格は個体によって違います。
Q3.ツキノワグマは主に何を食べますか?

A.野生のクマは以下のものを食べます。
【春】 植物の新芽、山菜、タケノコなど
【夏】 サクラ・クワ・イチゴ類・ミズキなどの木の実、アリ・ハチなどの昆虫類
【秋】 ドングリ、サルナシ、ヤマブドウなど
当園で飼養のクマには、消化効率を上げるために加工されたトウモロコシ原料の飼料や、クマの嗜好性に配慮された、穀類が原料の飼料を与えています。
Q4.ツキノワグマの行動パターンや習性は?
A.食性は植物食中心の雑食性で、季節によって食べるものが変わるのが特徴です。主に朝夕の薄暗い時間帯に活発に活動しますが、日中の活動も目撃されています。高い学習性により人馴れをし、危険性が高まる場合があります。
Q5.繁殖や子育てについても教えてください。
A.繁殖期は5〜7月頃の初夏で、冬眠中の1〜2月頃に出産。母グマは冬眠を続けながら約3カ月間冬眠穴の中で哺育を行います。約1年半〜2年の子育て期間を経て、仔グマは幼獣、成獣へと成長していきます。

Q6.「北秋田市 くまくま園」の職員だからこそ知る、ツキノワグマの魅力は?
A.当園の取り組みとして、ツキノワグマのエサやり体験や、ヒグマとガラス越しに対面できるコーナーがあります。特にエサやり体験は、エサをねだるために立ち上がったり、可愛らしい仕草をしたりする姿を間近で見ることができ、迫力と愛らしさの両方を感じられ、楽しみにご来園される方が多くいらっしゃいます。

※野生のクマと飼養のクマは生態が異なるため、秋田県自然保護課発信の情報等も参考を。
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/23295

【イベント】GWは可愛い子グマやヒグマに会いに行こう!
4月29日、いよいよ「くまくま園」が今季オープン! オープニングセレモニーに加え、可愛い子グマとのふれあい体験も開催する。ゴールデンウイークの5月2日〜6日は、迫力満点のヒグマのエサやり体験も実施。5月5 日のこどもの日は、中学生以下が入園無料に♪ 子グマのふれあい体験は4月29日〜5月6日まで。愛らしいクマたちとの素敵なふれあいを、ぜひ家族みんなで体験してみては。
【参考】
ツキノワグマの基礎的な生態の理解 – 環境省
https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort5/effort5-3e/joukyu/kuma_2.pdf
クマについてよくあるご意見・ご質問|美の国あきたネット
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/85123
クマ類の冬眠・繁殖との関係・HUSCAP
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/89098
教えてくれたのは「秋田県自然保護課ツキノワグマ被害対策支援センター」
・クマについてもっと知りたい人は、美の国あきたネット「クマについてよくあるご意見・ご質問」を
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/85123
・出没・人身事故情報の共有・確認には、ツキノワグマ等情報マップシステム「クマダス」の活用を
https://kumadas.net/

Q1.秋田県自然保護課ツキノワグマ被害対策支援センターの取り組みについて教えてください。
A.獣医師や、自然保全・野生動物について専門的に学んできた職員が在籍し、主に3つのことに取り組んでいます。
① クマを出没させない・被害を発生させないための取り組み
地域の方々との集落点検や、電気柵の設置指導など対策の助言を行い、クマが出てきづらい環境を作っています。
また、市町村職員を対象にした研修や学校などでの出前講座を行ったり、SNSや各種メディアを活用することも。クマの生態や対策に関する正しい知識の普及に努めています。
② 出没に備える・対応する取り組み
クマの市街地出没を想定した対応訓練の支援を行っています。訓練は、市町村や警察署など、関係機関同士の関係づくりも目的の一つ。クマが出没し、市町村の要請を受けた場合には、市町村や警察などと連携しながら、吹き矢や麻酔銃による麻酔対応を担うこともあります。
③ 事故が発生した時の対応
現場検証や可能な限り被害者から状況の聞き取りを行い、事故分析を実施。また、同様の事故を防ぐため、実例を元に情報を発信しています。


Q2.なぜ近年、クマが人里に降りてきているのでしょうか?
A.秋田県の場合、クマが人の生活圏に現れる理由は以下の3点が考えられます。
① クマの分布の拡大
近年は人の生活圏が縮小し、山や藪が広がり家のすぐ裏まで山が迫っているような状態になりました。クマはそうした場所にも分布するようになり、人とクマが隣り合って生活することになっている地域があちこちにできている状況です。必然的に、人とクマが出会ってしまう機会が増えています。
②魅力的な人の食べ物
昔は人が食べていた栗・柿・クルミですが、今は食べずに放置されることが増えました。そうした食べ物は、山のドングリ類に比べて豊凶が少なく容易に得られ、栄養豊富で美味しい。クマは、人が植えたものの方がより魅力的であることや、山の食物が不作の年があることなどの理由から、食べ物を求めて人の生活圏に現れると思われます。
③クマの通り道の増加
近年は耕作放棄地や空き家などが増え、藪や林があちこちに見られます。クマはこうした場所に身を隠しながら移動することで、人に見つからないまま、人の生活圏にアクセスできてしまいます。
これらの背景には人口減少や少子高齢化、生活様式の変化があります。
都市への人口流出などにより集落の人手が減ったこと、家畜飼養に伴う草刈りや薪利用、栗や柿、クルミの採取といった営みが失われたことで、クマが身を隠し、食べ物を得やすい環境が広がってしまっているのです。

Q3.特に、クマに注意が必要な時期は?
A.通年になりますが、クマは季節によって食べるものが違う=利用頻度の高い場所が違うので、その時々で異なる注意が必要です。
【春】 冬眠から目覚める時期。クマは芽吹きたての柔らかい葉っぱや山菜を食べます。山菜やタケノコ取りで山に入る時は音を出して鉢合わせを防ぎましょう。また、お弁当など荷物は持ち歩きを。荷物を置き身軽な状態で採りに行って、収穫物をまた置いて採りに行って…ということをすると、それを見つけたクマは人がいるところに食べ物があることを学習し、寄ってくるようになります。実際に以前、そういったクマによるとみられる事故が発生しました。当該地域は入山が禁止されているので、立ち入らないようにしましょう。
【夏】 山の食物が少なくなり、1年で最もクマが痩せる時期。トウモロコシなどの農作物を狙って出てくることもあります。畑での人身事故に注意しましょう。
【秋】 脂肪を蓄える時期。山の食物が少ない年には、食物を求めて行動範囲を広げるので、集落でも遭遇リスクが高まります。
【冬】 冬眠の時期ですが、冬眠は食物のない季節を乗り越えるための戦略なので、食べ物がある場合は眠りません。山の食物が凶作だった2023年は、雪が降る時期でも、収穫せずに放置されている柿を食べているクマがいました。
Q4.クマに出会わないために、どのような予防策が必要ですか?
A.日常的にできることとして、音を立てて人の存在をアピールすることは基本中の基本です。熊鈴を持ち歩く場合、音がよく響くものを選びましょう。風の強い日や雨の日は、いつもより大きな音を立てる工夫が必要です。
あとは、クマが食べられるものを放置しないこと。栗や柿など、実のなるものはこまめに収穫を。県では、所有者不明で切れない木の伐採を国に要望しているほか、各市町村を通して伐採に関する補助を行っています。また、2025年は、米ぬかや機械油など匂いのするものにつられて倉庫に侵入したケースも非常に多くありました。倉庫や車庫、小屋は開けっぱなしにせず閉めましょう。
家の周りの草を刈り取って、見通しを良くすることも有効です。クマは藪の中に身を隠しながら移動します。草刈りは、クマの移動経路をなくすことに加え、目視でクマの在・不在が確認できるようになることが利点です。至近距離で鉢合わせるリスクを下げることができます。

最近は、クマがガラスに映った自分をほかのクマだと思って攻撃する、もしくはガラスが見えていなくて突っ込んでいくケースもありました。掃き出し窓の下の部分など、クマの目線の高さ(人間の腰くらい)に、透けないシートを貼る対策も有効です。
また、情報の収集・共有も大切です。地域でクマを目撃したら、近所の人と「さっきそこに出たよ」と情報共有して、お互いに注意し合いましょう。出没情報は、県の情報マップシステム「クマダス」でも確認することができます。
Q5.クマに出会ってしまった時に取るべき行動を教えてください。
A.まずは落ち着いてください。クマの様子をうかがいながらゆっくり後ずさりして距離を取りましょう。近くに建物や車があれば、すぐに避難を。なければ、クマとの間に電柱や塀などの障害物を挟むようにして移動しましょう。
クマに襲われそうな場合は、両手を首の後ろで組んで顔を伏せる防御姿勢をとってください。クマの攻撃は頭部に集中します。頭部や頸部への致命傷や顔面への大怪我を防ぐため、首から上を守りましょう。

クマ撃退スプレーを持っていて、至近距離で出会った場合は、迷わず噴射を。顔を狙うことが重要です。実際に2025年、3人で歩いていて、スプレーを持っていない前の2人がクマに襲われ、後ろの1人がスプレーを噴射すると逃げていったという事故がありました。持ち歩くだけでなく、取り出してさっと構える練習を日頃から行いましょう。
絶対にやってはいけないのが、背中を向けて走って逃げること。そうするとクマは追いかけたくなりますし、時速50kmで走ることができるというデータがあるほど足が速いので、追いつかれて襲われてしまいます。
また、極力荷物を置いて逃げないようにしましょう。その中に食べ物が入っていたら、クマは「人を襲えば食べ物が手に入る」と学習します。そういったクマは確実に捕獲しなければならないため、もし食べ物を置いて逃げた場合は、必ず警察か市町村に通報してください。
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